Lens Impression
オールドレンズファンにはなじみ深い「富岡光学」の純正大口径レンズトミノン55mmf1.2です。同社は自社ブランドである「Lauser ローザー」「Tominon
トミノン」「Tominor トミノール」などよりも、各社に向けてOEM 生産したレンズでより名の知られたメーカーと言ってよいでしょう。
創立は1932( 昭和7) 年。東京市大森区雪ヶ谷に創立者富岡正重の名をとって作られた富岡光学器械製作所がその始まりで、戦時中は軍需品に比重を置きましたが1945(昭和20)年に爆撃を受け工場が全壊。のちに社長夫人の実家である青梅に移り、1949(昭和24)年に株式会社富岡光学器械製造所と名を一部改めて再スタートしました。その後ヤシカとの関係を深めていく中で、ヤシカ、コンタックスを始めとする各社一眼レフ用レンズのOEM生産に着手していきました。
現在中古市場で見かける各社レンズの中でも、関係の深かった多くのヤシカ名一眼レフ用レンズ(M42,Y/C マウント)を中心に、リコー、マミヤ、チノン、その他各社など多岐に亘って富岡光学製のレンズを見ることができます。
今回のレンズは、同社製レンズの中でも最も人気の高いものの一つですが、Tominonトミノンという単独ブランド名の個体は数が少なく、通常市場で見られる個体は、Yashinon,
Cosinon, Revuenonなどとのダブルブランド名になっているものがほとんどです。今回は珍しい単独ブランド名のものを使用しました。
レンズ構成は変形ダブルガウス型ですが、前群の2群目が分離、後群の3群は貼り合わせですが凸レンズが凹レンズにかなり食い込んだユニークな形状になっており、さらにその後は凸レンズが向かい合わされるように2枚分離配置されるという、かなり凝った構成になっています。
レンズ画像を見るとかなり強い黄色のコーティング色が見られます。このTominonレンズもご多分に漏れず新種ガラス使用に伴う黄変が見られるようですが、この個体はその傾向はほとんど無いようです。評判通り非常に優秀なレンズですが、何より面白いのはf1.2開放で撮影した時の「ボケ」の美しさでしょう。これが見られるので、f1.4ではなくてf1.2なのだと言いたくなるような特徴的な味わいを楽しませてくれます。
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